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DeNA南場智子会長が「AIにオールイン」宣言 〜AI経営が切り拓く未来と、ヘルスケア業界への波及とは

  • 執筆者の写真: 山崎 広治
    山崎 広治
  • 2025年7月23日
  • 読了時間: 7分

2025年2月5日、DeNAが主催する技術カンファレンス「DeNA TechCon 2025」にて、同社創業者であり現会長の南場智子氏が、強烈なインパクトを持つ言葉を発しました。


「DeNAはAIにオールインします。これは、私たちにとって“第2の創業”です」

経営トップがここまで明言する例は、国内ではまだ多くありません。しかしこの宣言は、単なるスローガンではなく、企業戦略と組織のOSそのものを刷新する決意表明でした。そして、そのインパクトはテクノロジー業界だけにとどまらず、ヘルスケア業界を含むさまざまな産業に波及し始めています。





「AIにオールイン」──南場氏が語る“第2の創業”

生成AIの進化、特にChatGPTを代表とする大規模言語モデル(LLM)の登場により、企業活動の前提が大きく変わり始めています。業務効率化にとどまらず、戦略立案、意思決定、価値創出といった企業の中核機能にAIが入り込む時代に突入しています。


南場智子会長はこの変化をいち早く察知し、AIを単なる業務ツールとしてではなく、企業全体の根幹に据えるべきだと判断しました。その結果生まれたのが「AIにオールイン」という方針であり、これはDeNAの企業としての在り方そのものを見直す大きな決断です。


DeNAはこれまで、EC・ゲーム・モバイル・スポーツ・ヘルスケアなど多様な分野で成長してきましたが、今回の「第2の創業」は、AIを全社に浸透させ、組織と文化を再設計する取り組み。特定の部署に限定するのではなく、全社員がAIを活用する前提で企業体制をアップデートしようとしています。





南場氏自身が使いこなすAIツール──経営者は「使う側」に

この構想に説得力を与えているのは、南場氏自身がAIの「使い手」であるという事実です。

中でも特に印象的だったのは、南場氏がシリコンバレー滞在中に感じた「日米間のAIへの意識差」についてのコメントです。


南場氏は「米国の経営者や現場の人たちは、“AIをどう使いこなすか”に強い好奇心と能動性を持っている」と述べ、日本ではまだ“AI=IT部門が扱うもの”“なんとなくすごそうだが、遠い存在”といった認識が残っていると指摘しました。


この体感が、「経営者自らがAIの“使い手”になる必要性」を強く意識するきっかけになったとも語っています。


ちなみに南場氏は、AIツールは個人でも会社全体でもさまざまなものを使っているとのことでしたが、その一部が下記のツールです。

  • Perplexity AI:人物調査や競合分析など、高度な検索・情報収集に活用

  • NotebookLM(Google):膨大な社内資料の要点整理や意思決定補助

  • Circleback:会議の自動要約とアクションプランの生成


これらの生成AIツールを実際に駆使しながら、南場氏は「AIはビジネスパーソンの右腕になり得る」と語ります。そして、それを経営層自らが使いこなすことの意義を何度も強調しています。


AIは現場任せにすべきものではない──経営層がその可能性と限界を理解し、自らの意思決定に活かすべき時代が到来しているのです。




「10人でユニコーン」構想──組織の再設計へ

南場氏が掲げた「10人でユニコーンを創る」という構想は、AIによって従来の組織運営の常識を覆そうとするものです。


背景には、わずか数名のチームで時価総額数千億円規模にまで成長した米国スタートアップの事例があります。特にPerplexity.aiのような少数精鋭型のAIスタートアップは、今や次世代のビジネスモデルの象徴となっています。


DeNAでも、そうした時代の変化を受けて、既存の組織体制を大きく見直す方針を打ち出しています。

具体的には、

  • 現行の事業は社員の約半数で維持&成長

  • 残る半数はAIを軸にした新規事業開発に集中

という大胆なリソースの再配置が進められています。


これにより、より少人数でも高いパフォーマンスを発揮できる、AIドリブンな小規模高密度組織への移行を目指しています。


この構想は単なる人員削減ではなく、「いかにAIと人の力を掛け合わせ、スケーラブルな組織を築くか」という問いへの挑戦でもあります。まさに、“組織の再設計”そのものと言えるでしょう。




DeNA AI Link──AI導入支援のための新会社

「AIにオールイン」の戦略を具体化する動きとして、DeNAは新たな子会社「DeNA AI Link」を設立しました。この会社は、企業や自治体を対象に、生成AIの導入・活用を支援するコンサルティング事業を担います。


DeNA AI Linkの特徴は、単なるツール提供にとどまらず、業務改善から組織変革、社会課題の解決までを見据えたAIの実装支援を行う点にあります。


主な支援領域は以下の通りです

  • BtoB向けの業務効率化と自動化支援

  • 医療やヘルスケア分野へのAI導入支援

  • 自治体との連携による公共サービスのデジタル化推進


南場氏はこの新会社について「AIによって人間の可能性を最大化するための“導管”になりたい」と語っており、社会全体にAIの価値を浸透させることが使命だと位置づけています。


DeNA本体が“変革の当事者”として走る一方で、AI Linkは“変革の触媒”として他社や行政とともに日本社会全体を動かしていく──その役割分担も明確です。今後の展開にも注目が集まります。





ヘルスケア業界への波及──「医療×AI」の新たな可能性

DeNAが掲げるAI戦略は、テック業界だけでなく、医療・ヘルスケア業界にも大きな影響を及ぼす可能性を秘めています。とくに、労働集約的で人材不足が深刻な医療現場では、AIの導入が業務の質・量の両面で変革をもたらすことが期待されています。


1. 医療業務の効率化と質の向上

  • AIチャットや画像認識による問診・診断支援

  • 生成AIによる電子カルテの要約・整理

  • 在宅患者のモニタリングと異常検知


こうした活用により、医師や看護師の負担軽減と、患者対応の質向上を両立させるモデルが構築されつつあります。実際、複数の医療スタートアップがすでにこの分野で成果を出しており、DeNAのような大手の参入はさらなる普及の追い風となるでしょう。



2. 少人数チームでの医療提供モデル

「10人でユニコーン」という思想は、医療・介護現場にも応用可能です。たとえば、AIナビゲーション+遠隔診療+IoTセンサーを組み合わせた「スマートケアチーム」によって、医師や看護職の不足が深刻な地域でも、質の高いケアを持続的に提供できる未来が現実味を帯びてきました。



3. パーソナライズド・ヘルスケアの加速

DeNAはこれまでに、遺伝子検査サービス「MYCODE」や健康支援アプリ「Kencom」などを展開してきました。今後はAIを活用し、栄養・運動・睡眠・メンタルの個別最適化を行うことで、より深く一人ひとりの生活に寄り添うヘルスケアサービスの提供が可能になります。



4. 健康経営・ウェルビーイングのDX化

企業がウェアラブルデバイス(Oura Ring、Apple Watch など)を活用し、ストレスや睡眠などの生体データをAIが解析・予測することで、早期介入や離職リスクの低減も期待されます。DeNAのように経営層自らが旗振り役を務めることで、トップダウンによる健康経営DXが本格的に加速していくでしょう。





おわりに──「AIを使う経営者」が未来を創る

南場智子会長の「AIにオールイン」という宣言は、単なる技術導入の話ではありません。それは、経営者としてどう時代と向き合うのか、どう組織を導いていくのかという、極めて本質的な問いかけでもあります。


この取り組みの中で示されたのは、以下の3つの姿勢です

  • 経営者自身がAIを「使う側」に立つ

  • 組織や文化そのものを再設計する

  • 社会課題に対してAIで新たな価値を創出する


DeNAは、変化を恐れるのではなく、自ら変化を起こす側に立つことで、AI時代の経営モデルを先んじて提示しようとしています。その姿勢は、スタートアップや大企業に限らず、あらゆる規模の組織にとって示唆に富んでいます。


今後、AIを活用することは「選択肢」ではなく「前提」となる時代がやってきます。だからこそ、いまこの瞬間に、経営者自らが一歩踏み出せるかどうかが、企業の未来を大きく左右するのです。


「AIは、わたしたちの“右腕”になる」──その言葉を行動に移すリーダーが、次の時代を切り拓いていくのだと、南場氏は私たちに伝えてくれています。





参考リンク・資料

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