「Driveline Baseball式」“社長の身体”を再設計する方法
- 山崎 広治

- 6 日前
- 読了時間: 19分
はじめに
2025年10月、大谷翔平選手の二刀流活躍をキッカケに、NHKの番組「漫画家イエナガの超超定義 ~スポーツアナリティクスが大谷活躍のヒミツ?~」が放送されました。番組では「スポーツアナリティクス」という言葉がクローズアップされ、データ・技術・トレーニングという三つの要素が、かつて“感覚と経験”が支えていた世界を変えつつあることが紹介されました。
野球という“身体・反射・技術”が極めて重要なスポーツですら、「ただ練習時間を増やす」「ただフォームを繰り返す」という旧来のモデルから、「動きを数値で捉え、改善を高速で回す」機械化・可視化のフェーズに移行しているのです。
番組で深く取り上げられたのが、米国ワシントン州ケントに拠点を持つDriveline Baseball。モーションキャプチャ、バイオメカニクス、データ解析、独自トレーニングプログラムが融合した施設です。
そして今、同じような「可視化・数値化の波」は、トップアスリートだけでなく、経営者・起業家・ビジネスパーソンの世界にも確実に押し寄せています。
Oura Ring のような睡眠・コンディションを計測するリング型デバイス、FocusCalm のような脳波・集中度を測るウェアラブル、リブレ(フリースタイルリブレ)のような持続血糖モニタリングデバイス、さらにはバイオロジカル検査(血液検査、ホルモン・栄養解析、遺伝子検査、腸内環境検査など)が、「感覚的な体調管理」を「データに基づくコンディショニング」へと変えつつあります。
そしてこの“スポーツの最前線”で起きている構造的変化は、実はビジネス、特に経営者・起業家が直面する「ヒト・組織・パフォーマンス」の課題と極めて親和性があります。いかに「人材のポテンシャルを可視化し、改善サイクルを高速で回し、ツールと仕組みによって習慣化させるか」。これは選手だけでなく、企業や組織が今まさに取り組むべきテーマです。
今回の記事では、番組から提示されたインサイトを起点に、Oura Ring や FocusCalm、リブレなどのウェアラブル・ヘルステック、さらにバイオロジカル検査を活用した“ビジネス版スポーツアナリティクス”という視点も織り交ぜながら、解説していきます。

第1章 スポーツアナリティクスの現在地
「スポーツアナリティクス」という言葉。これは単に試合データを分析して勝敗を予測する世界だけを指すわけではありません。番組では、野球選手の“身体/動作”“フォーム/投球・打撃”といった領域まで、データと技術によって可視化・改善されつつある実態が紹介されました。
従来、野球における「速球」「球威」「打撃力」「守備範囲」といった評価軸は、スカウトの経験や勘、コーチの感覚に依拠してきました。しかし近年、平均ファストボール速度の上昇、打者のスイング初速や角度の高度化など、スポーツ自体の要求水準が飛躍的に高まっています。こうした背景の中で「誰もが持てるポテンシャルを、いかに引き出すか」がテーマになり、データ駆動型アプローチが急速に台頭しています。
番組では、投手のリリース時の手首の動き、体幹の回転、軸脚の沈み、バットの初速、打球角度などがモニターに表示される様子が映し出され、「感覚ではなく数値で捉える」姿が鮮明に描かれていました。そうした計測・解析により、従来“なんとなく良いフォーム”とされた動きが「この角度は効率が悪い」「この回転はロスが生じている」と示され、改善設計が可能になってきています。
ここで重要なのは、「測れるものは改善できる」という発想です。これはスポーツだけでなく、睡眠・心拍・自律神経・血糖値・脳の集中度といった領域にもそのまま当てはまります。
たとえば、
Oura Ring であれば、睡眠ステージ、HRV、安静時心拍数、コンディション(Readiness)
FocusCalm であれば、脳のリラックス度・集中度
リブレであれば、24時間の血糖値の変動パターンといった“目に見えない状態”を数値として捉えることができるようになりました。
これは、ビジネスパーソンにとっての「フォーム解析」に相当すると言えるでしょう。
加えて、番組が強調していたのは、ただ測定するだけで終わらないということ。数値をとった後に「この数値は何を示しているか」「どう変えるべきか」「どのトレーニングが効くか」という分析設計があり、その後「どれだけ変化したか」を測定するという高速な改善サイクルが回されている点が鍵でした。
さらにもう一つ、興味深かったのは「データが直感を置き換えるわけではない」というメッセージです。番組では、データ万能論を戒める姿勢が示されていました。「データは直感・経験を否定するものではなく、直感を研ぎ澄ますための補助器具である」という発言が紹介されていたためです。これこそ、スポーツアナリティクスの本質とも言えるでしょう。データを扱う「人間」がいかにしてその数値を読み、トレーニングと改善に結びつけるかが勝負なのです。
このように、スポーツアナリティクスの現在地を振り返ると、「測定可能な動き」「数値化された改善」「高速な改善サイクル」「人間知と直感との統合」という四つのキーワードが浮かび上がります。そしてこれらは、Oura Ring や FocusCalm、リブレ、各種バイオロジカル検査を用いて『体調・集中・代謝』を可視化する現在のヘルステックの潮流とも、構造的に全く同じモデルだと言えます。次章で紹介する施設は、まさにこの構造を“仕組み化”している代表例です。

第2章 Driveline Baseballとは何か
スポーツアナリティクスという言葉を語る際、番組で中心に登場したのが Driveline Baseball(以下「ドライブライン」)です。同施設の公式サイトには次のような宣言があります。
“Driveline Baseball is the premier data-driven baseball player development organization in the world. We train players through state-of-the-art motion capture assessments, physical therapy evaluations, and specialized assessment-retest based pitching, hitting and high performance coaching.”
つまり、ドライブラインは“データ駆動型の選手開発機関”として自身を位置づけています。
創設者は Kyle Boddy 氏。コンピューターサイエンス・経済学を学び、マイクロソフト等でデータサイエンスの知見を身につけた後、2008年にガレージラボとしてこの施設を立ち上げました。設立以来、R&D(研究開発)を核とし、ピッチング、ヒッティング、高性能コーチング部門と密接に連携しています。
この「研究者×トレーナー×選手」の組み合わせが、彼らの大きな強みとなっています。
施設の所在地は米国ワシントン州ケント(Kent, WA)で、最先端のセンサー、高速カメラ、軌道測定装置などが備えられています。データ科学の手法を野球トレーニングに直結させたこのモデルは、MLB(米大リーグ)選手にも広く支持されており、実績も公表されています。ドライブラインは、ただ技術を使うだけでなく、「有効性を検証し、プログラム化して選手に適用する」ことを強く意識しており、その姿勢がブログや研究発表などからもうかがえます。
つまり、ドライブラインとは「研究から現場へ」「データから改善へ」「トレーニングからパフォーマンスへ」という三重の“橋”を作り上げた施設であり、スポーツトレーニングの次世代形を象徴していると言えます。

第3章 手法の核心:動きを可視化し、改善を設計する
では、ドライブラインが実際にどのように選手の動きを捉え、改善につなげているかをもう少し深掘りしてみましょう。番組で紹介された手法を基に読み解きます。
まず「モーションキャプチャ/バイオメカニクス」の活用です。ドライブラインでは、リリース時点の肩・手・体幹の角度、脚の着地位置、股関節の回転速度、バットの初速・角度など、多種多様なデータを高速カメラ・地面反力計 (force plates)・軌道追跡装置などを用いて取得します。このように“目に見えない動き”を数値に変換することで、選手自身が「こう動いていたからこういう数値になっていた」「次はこう動いたらこう改善できる」というフィードバックを得やすくなります。
次に「評価→改善→再評価」の設計です。測定したデータを分析し、選手・コーチとともに“改善プログラム”を設計します。例えば、“肩の水平外転 (SHA) を46°から58°に改善する”“股関節・肩の分離角 (Hip-Shoulder Separation) を増やす”“連動タイミングを0.05秒縮める”といった個別目標が設定され、数週間〜数ヶ月単位でトレーニングが組まれ、その後再評価されるという流れが実践されていることが複数のレポートで確認できます。
さらに、ドライブラインでは「ツール・環境・教育」の整備にも注力しています。独自開発のトレーニング器具(たとえば加重ボール/軽量ボールを用いたプログラム)や、分析ソフト・選手管理システム、コーチ向け認定プログラムなどが用意されており、選手だけでなくコーチ・研究者が“自分で改善を起こせる”構造が整えられています。これにより、継続的に“改善を起こす仕組み”が施設内に定着しています。
このように、ドライブラインの手法は、単に“トレーニングを頑張る”というモデルではなく、「動きを測定・設計し、改善サイクルを高速に回す」という構造的なアプローチだと言えます。
同じ構造は、ビジネスパーソンの「身体・脳・代謝」にもそのまま適用できます。
例えば、
Oura Ring で睡眠の深さ・レム比率・HRVを測定し、就寝時間やカフェイン摂取のタイミングを調整する
FocusCalm で集中度・リラックス度を測り、どの時間帯・どの環境だと“ZONE(ゾーン)に入りやすいか”を検証する
リブレで食後血糖の立ち上がり方を見て、プレゼン前や会議前に避けるべき食事パターンを見つける
バイオロジカル検査で栄養状態やホルモンバランスを把握し、サプリメントや食事・睡眠を最適化する
といった形です。
ここでも「測る → 改善する → 再度測る」というプロセスが核になっています。

第4章 実践サイクル:測定 → 改善 → 再測定
スポーツの現場で本当に差がつくのは、単に“良いトレーニングをする”ことではなく、「何を・どれだけ・どう変えたか」が明確であり、その改善が循環していることです。番組で強調されていたのは、まさにこの“サイクル”の速度と質でした。
まず、ドライブラインでは4週間毎など定期的な「正式なアセスメント」を実施しています。「モビリティチェック、筋力チェック、投打動作チェック」など複数項目を用いた評価が定期的に行われており、これは「トレーニング中に気づきにくい変化を可視化するため」に設計されています。 このように、まず「現状を知る」期間を設けることで、選手自身やコーチが“どこに改善余地があるか”を共有できます。
次に、改善プログラムの設計・実行です。ドライブラインでは、測定された数値をもとに「改善すべき動き/モビリティ/筋力/連動/投打フォーム」などを具体化し、それぞれに対してトレーニング工夫を設けています。例えば、重さの異なるボール(オーバーロード/アンダーロード)を用いた投球練習がその一例です。 このようなプログラムのキモは、「ただ努力量を増やす」ことではなく、「どの動き・どの数値を狙って変えるか」を明確にする点にあります。
そして再測定。定期的に同じ測定を行い、改善プログラムが効果を発揮しているかを確認します。もし期待する数値が出ていなければ、プログラムを修正して次サイクルへ継続されます。番組でも「測定→改善→再測定を半年・1年ではなく数週間〜数か月単位で回すことで差が出る」という説明がありました。これは、改善サイクルをいかに高速化し、かつ確実に回せるかが勝負どころであるということです。
この構造は、経営者・起業家のコンディションや仕事のパフォーマンスにそのまま応用できます。
例えば:
測定(Measure)
Oura Ring で睡眠時間・深い睡眠・レム睡眠・HRV・安静時心拍数を日々トラッキングする
FocusCalm で、朝のデスクワーク時や重要会議前後の脳の状態(集中・リラックス度)を測る
リブレで、食事や間食が血糖値に与える影響を24時間モニタリングする
バイオロジカル検査で、鉄・亜鉛・ビタミンD・ホルモンバランスなどの状態を定期的にチェックする
改善(Improve)
データをもとに「就寝時間」「カフェイン・アルコールのタイミング」「炭水化物の量と種類」「会議の時間帯」「休憩の取り方」を設計し直す
集中が落ちる時間帯に、マインドフルネスや軽いエクササイズを取り入れる
血糖値の急上昇を招く食事を避け、安定しやすいパターンに切り替える
再測定(Re-test)
2〜4週間ごとに、同じ指標を振り返り、「睡眠スコアはどう変化したか」「血糖変動は安定したか」「集中度が高い時間帯は増えたか」を確認する
必要に応じて対策を微調整し、次のサイクルに反映する
具体的には、測定データを本人とコーチなどの専門家で共有し、「どの生活習慣・仕事の組み方が数値に結びついているか」を“見える化”します。経営者自身が“この時間に寝るようにしたらHRVが上がった”“この食事を変えたら午後の眠気と血糖スパイクが減った”“この時間帯に集中タスクを置くと、FocusCalm のスコアが安定した”といった因果感/変化感を持つことで、改善意識が持続します。
このサイクル構造には、次のようなビジネスへの応用可能性があります。
現状可視化 → 改善設計 → 結果フィードバック を定期的に回す
サイクルをなるべく短くすることで、変化に対する対応速度を上げる
結果を「数値+変化軌跡」で捉えることで、モチベーションと行動の変化を促す
スポーツの世界では、こうしたサイクルの精度・速度が“マージン”を生み出します。経営・組織の世界でも、この構造を自社に導入することで、静的な改善から“動く改善”へと移行できます。

第5章 経営・組織への翻訳:ヒト × ツール × 仕組み
さて、ここまでスポーツの現場で起きている構造を整理しましたが、経営者・起業家の立場から考えると、「どう自社/自分自身に落とし込むか」が重要です。スポーツ領域の三本柱「ヒト」「ツール」「仕組み」を、組織/ビジネスで応用していく視点を掘り下げます。
まず「ヒト」。スポーツの現場では、選手自身がデータを理解し、改善アクションを自主的に起こせる態勢が求められます。ドライブラインでは、選手だけでなくコーチ・トレーナー・解析者が一体となって“改善可能な人材”を育てています。 ビジネスの世界では、「数値を読み取る力」「改善意識を持つ力」「自ら動ける構造を理解する力」がヒトの価値を高めます。社員・チームにこのマインドセットを浸透させることが第一歩です。
次に「ツール」。ここで、スポーツのモーションキャプチャやセンサーに相当するのが、ビジネスにおけるウェアラブル・ヘルステックやデジタルツール群です。
例えば
個人のコンディション可視化ツール
Oura Ring:睡眠・HRV・安静時心拍・体温変動などを通じて「今日どこまで攻めて良いか」を判断する指標を提供
FocusCalm:脳波から集中・リラックス度を可視化し、「どんなタスク構成・時間帯だと自分はZONR(ゾーン)に入りやすいか」を把握
リブレ:食事やストレス、運動が血糖値に与える影響をリアルタイムに示し、「パフォーマンスを落とさない食べ方」を設計
バイオロジカル検査・解析
血液検査・栄養解析:不足しがちな栄養素や炎症状態を把握し、サプリメント・食事・生活習慣を調整
ホルモン・ストレス指標(コルチゾールなど):ストレス負荷や回復の度合いを定点観測
遺伝子検査・腸内環境検査・有機酸検査:代謝のクセや解毒能力、腸内フローラなど「生まれ持った傾向」を理解し、無理のない戦い方を選ぶ
業務・組織パフォーマンス可視化ツール
集中時間トラッカー、タスク管理ツール
BIツール、ダッシュボード、OKR管理システム
生成AIや各種分析プラットフォーム
大切なのは単に導入することではなく、「使われているか」「改善につながっているか」を点検できる状態にすることです。つまり、「パフォーマンスを上げるために、どの数値を、どのツールで、どの頻度で見るのか」を設計することが重要になります。
そして「仕組み」。どれだけ良いツールがあっても、定期的に振り返り・アクション設計・再測定がないと、改善サイクルは停滞します。スポーツでは「4週間毎の測定」「改善プログラム」「次評価」という仕組みを回しています。
ビジネスでは、例えば次のような仕組みが考えられます。
週次の「コンディション&パフォーマンスレビュー」を設け、
Oura Ring の睡眠スコア・HRV
FocusCalm の集中スコア
リブレの血糖変動(タイムインレンジ)
主要KPI(売上・提案数・思考時間など)を簡単に振り返る
月次でバイオロジカル検査や詳細なヘルスチェックを行い、「どの程度、身体の土台が整ってきているか」を確認
半年〜1年単位で、検査結果と業績・パフォーマンスの変化を紐づけてレビューし、「どの介入策が効いたか」を検証
このように、「ヒト(マインドセット)」「ツール(ウェアラブル・検査・AI)」「仕組み(定期レビューと改善ルーチン)」を統合することで、個人・チーム・組織のパフォーマンス向上へとつながります。

第6章 ケース思考:経営者・起業家が今すぐできるアクション
ここまで理論的な構造を整理してきましたが、実践に落とし込むことこそ価値のあるステップです。経営者・起業家の皆様が「明日から動ける」アクションを、より具体的に考えてみましょう。
まずは「現状可視化から始める」こと。スポーツでいう球速や打球初速にあたるものを、ご自身の組織・自身の業務において定義します。例えば、チームの「集中時間」「メール返信時間」「会議生産性」「健康回復時間」などに加えて、次のような指標も候補になります。
Oura Ring の「睡眠時間」「深い睡眠・レム睡眠の割合」「HRV」「安静時心拍数」
FocusCalm の「集中度スコア」「リラックス度スコア」
リブレの「タイム・イン・レンジ(血糖が適正範囲にある時間の割合)」「血糖変動の幅」
ストレス・疲労・集中の主観スコア(1〜10段階)
バイオロジカル検査での栄養指標(フェリチン、ビタミンDなど)の変化
これらの指標を週次・月次で可視化できるように設定し、測定し始めることが第一歩です。「計測を始めた瞬間から、パフォーマンス改善プロジェクトが立ち上がる」と捉えてみてください。
次に、「改善サイクルを設計し、高速で回す」。例えば、毎週水曜日に「先週の睡眠スコアと集中スコアはどうだったか」「血糖が乱れた日は何を食べていたか」「会議や重要タスクをどの時間帯に置いたか」をざっと振り返るミーティングや個人レビューの時間を設けます。 そして、
来週は「◯時以降のカフェインをやめる」
「昼食の白米を半分にして、タンパク質と脂質を増やす」
「集中タスクをOuraのReadinessが高い時間帯にまとめる」
など、具体的なアクションを1〜3個ほど決め、翌週に再度チェックします。これだけでも改善速度が変わってきます。
さらに、 「ツール・環境・人材を掛け合わせて習慣化する」。例えば:
ツール:Oura Ring、FocusCalm、リブレ、ヘルスログアプリ、タスク管理ツールを導入
環境:毎週30分のコンディション&パフォーマンス振り返りミーティングを定例化
人材:コンディション担当・データ担当・改善アイデアを出す“パフォーマンスリーダー”をチーム内で任命
この三つの要素を同時に設計・運用することで、組織に“改善が当たり前になる文化”が浸透します。
加えて、改善の効果を可視化し「変化を味わえる」状態にしておくことも重要です。スポーツ選手が「この動きに変えたら○mph上がった」という実感を得るように、業務でも「睡眠スコアが10ポイント上がったら、午後の集中度が◯%上がった」「血糖変動を抑えたら、15時以降のパフォーマンス低下が減った」といった変化を共有しましょう。これにより、改善意欲=モチベーションが高まり、習慣化が加速します。
最後に、「改善を定着させるための仕組みを作る」。測定・振り返り・改善アクション・再測定というサイクルを、定例会議・ダッシュボード・評価制度などに組み込み、誰が何をいつまでにやるのかを明確にしておくことが肝要です。ここにバイオロジカル検査の結果やウェアラブルデバイスの長期データを統合することで、「その場しのぎの健康対策」から「戦略的なパフォーマンスデザイン」へと一段階進むことができます。

第7章 未来展望:パフォーマンスの最適化がもたらすもの
最後に、こうしたパフォーマンス最適化構造が進化していく未来像を描いておきます。スポーツ界では、データ駆動型トレーニングが怪我の予防を高め、選手のピーク寿命を延ばし、個々の“余白”を削っていくことが注目されており、実際にそのようなレポートも出ています。
同様に、ビジネス領域では、Oura Ring や FocusCalm、リブレなどのウェアラブルデバイスと、血液検査・遺伝子検査・腸内環境検査などのバイオロジカル検査が統合され、「経営者・組織のヘルスデータプラットフォーム」が整っていくでしょう。睡眠・ストレス・血糖・炎症・ホルモン・栄養状態と、売上・意思決定の質・イノベーション指標などが、同じダッシュボード上で俯瞰できる未来です。
ビジネス組織においても、この構造がもたらすメリットは少なくありません。改善サイクルが高速で回る組織は、変化に対して柔軟性を持ち、競争優位を築きやすくなります。顧客ニーズ・市場トレンド・技術進化といった外部変化に対して、“反応ではなく先手”で動ける体制が整っていれば、ギャップを埋めるどころか差をつけることも可能です。
さらに、パフォーマンス最適化の文化が定着した組織では、「改善=当たり前」「数値を基に考える」「ツールを使いこなす」というマインドセットが浸透し、そこからイノベーションが生まれる土壌が豊かになります。これは、ただ業務効率を上げるというだけでなく、社員一人ひとりが自律的に改善を起こせる組織へと進化することを意味します。
そして、健康経営・ウェルビーイングの観点でも、この流れは非常に価値があります。選手のコンディション管理が進化しているように、組織でも「集中力・疲労・回復・健康状態」を可視化し、改善するというモデルが広がりつつあります。Oura Ring や FocusCalm、リブレ、バイオロジカル検査を活用して社員の“土台”を整えることが、企業競争力になる日も近いでしょう。
このように、パフォーマンス最適化のモデルは、スポーツ界の専門領域だけでなく、私たちの仕事・組織・健康領域においても普遍的な構造を持っています。そして未来においては、「改善サイクルが当たり前」「データを生かす文化が日常」「ツールと仕組みが習慣化された組織」が、強さの基盤となるでしょう。

まとめ
本稿では、番組「漫画家イエナガの超超定義 ~スポーツアナリティクスが大谷活躍のヒミツ?~」を起点に、スポーツ界で起こりつつある「データ×テクノロジー×人間」の統合的変化について整理しました。特に、 Driveline Baseball が体現する「動きを数値化し、改善を設計し、高速化していく構造」は、Oura Ring や FocusCalm、リブレ、バイオロジカル検査といったヘルステックを組み合わせることで、ビジネスの現場においてもそのまま応用できるモデルです。
経営者・起業家として今日は次の問いを自らに投げかけてみてください。
あなた/あなたの組織では、どの指標を可視化していますか?(売上やKPIだけでなく、睡眠・HRV・血糖・集中度・疲労度といった“土台の指標”も含めて)
その指標に基づいて、どれくらいの頻度で改善サイクルを回していますか?(測定 → 振り返り → 改善 → 再測定 というサイクルは設計されていますか?)
導入しているツール・構築している環境・育成している人材は、“改善を起こすための仕組み”になっていますか?(Oura Ring・FocusCalm・リブレ・バイオロジカル検査・AIツールなどは「見るだけ」で終わっていませんか?)
身体・精神・スキルという三軸でパフォーマンスを捉えていますか?(どれか一つではなく、三つのバランスを意識できていますか?)
スポーツ選手が実践している手法を、ビジネスの現場に持ち込む。ウェアラブル・ヘルステックとバイオロジカル検査を活用して「見える化」し、ヒト×テクノロジー×仕組みを統合することで、明日からでも“本来のパフォーマンス”を引き出せる環境を作ることができます。まずは、可視化、改善サイクル、ツール/仕組みの掛け算から――今日、始めましょう。
【ご案内】
もしこの記事を読んで、「自分も Driveline のように改善サイクルを回したい」と感じたなら、KDMの無料個別相談をご活用ください。
相談では、
あなたに最適な“測定項目”の選定
ウェアラブルのデータの読み解き
改善サイクル(週次/月次)の組み方
睡眠・集中・血糖・栄養のボトルネック特定
あなたの仕事内容に適した“再設計プラン”を30〜45分で整理します。
スポーツアナリティクスを経営にインストールする第一歩として、“まず何を測り、どこを改善するか” を一緒に決めましょう。



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