キングダム流チームビルディング!目標達成率を爆上げする組織マネジメント術
- 山崎 広治

- 7月18日
- 読了時間: 14分

はじめに
中国の春秋戦国時代を舞台に、身寄りのない戦災孤児の少年・信が、中華統一を目指す若き秦王・嬴政とともに、天下の大将軍を目指して成長していく物語『キングダム』。
累計発行部数4000万部を超えるベストセラーであり、映画化もされたこの作品は、起業家や大企業の経営幹部からも愛読されていることで知られています。
2026年7月17日には、シリーズ第5作となる映画『キングダム 魂の決戦』が公開されました。
王騎を失った馬陽の戦いから3年後、秦以外の六国が手を組んだ総勢50万の「合従軍」が秦に攻め込む中、千人将に昇格した信たちが国門・函谷関を守り抜く姿を描く物語です。
私も早速劇場で観てきましたが、王騎という一人の将軍が残した思いが、時を経て信や仲間たちの中に受け継がれ、組織を動かす原動力になっている様子が改めて印象に残る内容でした。
兵を率いるリーダーシップ、数千人から数万人規模の兵をまとめる組織づくり、部下を育てる人材育成、そして戦略・作戦の練り方。多くの学びが『キングダム』には盛り込まれていると言われています。
実際、IoTプラットフォームを提供するソラコムの玉川憲社長は、起業を決めた背景に『キングダム』の存在があったと語っており、資産運用サービスを手がけるウェルスナビでは、マネジャー研修をきっかけに社内で全巻を読む文化が広がったというエピソードも伝えられています。
この記事では、信、王騎、河了貂、嬴政、そして蒙恬・王賁・楊端和といった登場人物の具体的なエピソードを交えながら、目標達成率を高める組織マネジメントの秘訣を読み解いていきます。


1. なぜ『キングダム』が経営者に読まれているのか
1-1 壮大な物語に凝縮された組織論
『キングダム』は、単なる戦記物語ではありません。数千人、数万人規模の兵をまとめる組織づくりや、部下を育てる人材育成、状況に応じた戦略・戦術の練り方など、現代のビジネスにも通じるテーマが随所に描かれています。
信が率いる「飛信隊」は、物語が進むにつれて数十人規模の小部隊から、数千人を率いる大部隊へと成長していきます。
この規模の拡大にともなって求められる組織運営のあり方が変化していく過程そのものが、ビジネスにおける組織拡大のプロセスと驚くほど重なっているのです。
1-2 経営者・起業家たちが実際に学びを得ている
先述のソラコム玉川社長のように、『キングダム』を経営や起業のきっかけ、あるいは日々のマネジメントのヒントとして活用している経営者は少なくありません。
チームワーク、リーダーシップ、アライアンスの組み方など、事業を運営するうえで直面する課題の多くが、物語の中の戦いや駆け引きと重なって見えてくるのだと言われています。
1-3 チームビルディングの専門家も注目する理由
楽天市場の出店者支援やチームビルディングの専門家として知られる仲山進也氏も、『キングダム』を題材にリーダーシップや組織開発について解説しています。
フィクションでありながら、現実のチーム論やリーダーシップ論を語るうえでの「共通言語」として機能している点が、多くのビジネスパーソンに支持される理由の一つだと考えられます。

2. 秘訣1:「引っ張らない」リーダーシップという逆説
2-1 主人公・信は完璧なリーダーではない
戦いになれば誰よりも先に敵に切り込んでいく主人公・信。その姿から、多くの読者は彼を理想的な「引っ張るリーダー」として捉えがちです。
しかし仲山氏は、信をむしろ「引っ張らないリーダーシップ」の持ち主だと分析しています。信は完璧なリーダーとしてすべてを率いているわけではなく、作戦を練ることはあまり得意ではないという弱点を抱えたキャラクターとして描かれているのです。
2-2 弱みを隠さないことがフラットな関係性を生む
信が率いる部隊「飛信隊」では、剣士の羌瘣が一時的に作戦立案を担っていた時期があり、羌瘣が隊を離れた後は連敗が続いたと言われています。
信自身が頭脳戦を苦手としていることは、隊のメンバーにも周知の事実であり、階級に関係なく率直に指摘される間柄だったとされています。
何百人将や什長、伍長といった階級が存在するにもかかわらず、隊の誰もがリーダーである信に対してフラットにものを言える空気がある。
これは、信がすべてにおいてみんなを引っ張る「完璧なリーダー」ではないからこそ実現している関係性だと指摘されています。
2-3 ビジネスにおける「引っ張らないリーダーシップ」の効能
「リーダーはすべてにおいて優れていなければならない」という思い込みは、多くの経営者やマネージャーを苦しめます。
しかし『キングダム』が描くリーダー像は、その思い込みを覆すものです。自分の弱みを隠さず、周囲からの率直な意見や指摘を受け入れられる関係性こそが、チームの自律性を引き出す土台になります。

3. 秘訣2:凸凹を活かした役割分担というチーム設計
3-1 河了貂に見る「頭脳」を担う役割の重要性
信が頭脳戦を苦手とする一方で、飛信隊の頭脳を担ったのが軍師・河了貂です。
当初は正体不明の小柄な少年(実は少女)として登場した河了貂は、信が夢に向かって邁進する姿を見て、自分にできる形で役に立ちたいと、軍師になる道を選んだとされています。
秦国随一の軍師である昌平君のもとで修行を積んだ河了貂は、趙国の将軍・万極との戦いや蕞の防衛戦といった重要な局面で、飛信隊に的確な指示を与える働きを見せ、信の躍進を支える存在になっていきました。
3-2 実力と行動で信頼を勝ち取るという構図
河了貂が飛信隊の中で認められ、信頼されるようになったのは、信の古くからの知り合いだったからではなく、困難な状況でも自ら決断し、行動したからだと指摘されています。
責任を人に転嫁せず、必要な場面で自ら指示を出せるかどうか。
この決断力こそが、河了貂という軍師の強みだと言われています。血縁や古い付き合いではなく、実際の行動によって信頼を積み重ねていくという構図は、組織における公正な評価のあり方を考えるうえでも示唆に富んでいます。

3-3 信・蒙恬・王賁——三者三様のリーダーシップで並び立つ三部隊
飛信隊以外にも目を向けると、『キングダム』にはさらに厚みのある組織づくりが描かれています。
信と同年代のライバルである蒙恬と王賁は、同じく「三百人将」として登場して以降、切磋琢磨しながら成長し、それぞれが「楽華隊」「玉鳳隊」という独立した部隊の隊長を任されるまでになります。
三人の個性はまったく異なります。信は瞬発力と突破力で現場を引っ張るタイプ、名門・蒙一族の血を引く蒙恬は人当たりがよく部下にも優しい一方で戦場では鋭い戦略眼を見せるタイプ、そして王翦の息子である王賁は口数が少なく生真面目で、槍の腕に秀でた職人肌のタイプだとされています。
普段はそれぞれ別の部隊を率いて独立して戦う三人ですが、山陽の戦いでは、強敵を討つために蒙恬が飛信隊・玉鳳隊・楽華隊による共闘作戦を提案し、三部隊が力を合わせて戦況を打開したと伝えられています。
それぞれが独自のカラーを持つチームでありながら、ここぞという局面では垣根を越えて連携する。
これは、事業部やプロジェクトチームが普段は独立して動きながらも、大きな山場では横断的に協力し合う企業組織のあり方そのものだと言えるでしょう。
異なる文化を持つチーム同士が、必要な時に無理なく連携できるかどうかは、組織全体の総合力を左右する重要なポイントです。

3-4 楊端和と山の民——価値観を共有する外部パートナーの力
もう一つ、『キングダム』の組織づくりを語るうえで欠かせないのが、山岳地帯に暮らす「山の民」を統べる女王・楊端和の存在です。
楊端和はもともと秦国の人間ではなく、いくつもの部族を自らの実力でまとめ上げてきた、独立した勢力のリーダーです。
秦とはかつて因縁もありましたが、「世界を広げたい」という彼女自身の大きな志が、中華統一を志す嬴政の信念と重なったことから、両者は同盟を結ぶことになったと伝えられています。
この同盟関係は、単なる主従関係ではありません。山の民はあくまで独立した組織でありながら、ここぞという秦国の危機的状況で援軍として駆けつけ、勝敗を左右する働きを見せています。
実際、秦国が滅亡の淵に追い込まれた蕞の防衛戦では、絶体絶命の状況に楊端和率いる山の民が駆けつけたことで秦国が救われたと語り継がれています。
この功績により、楊端和は後に秦国の「六大将軍」の一人にまで登り詰めることになります。社内に取り込んで統制するのではなく、互いの独立性を尊重しながら、共通のビジョンでつながる外部パートナーとして機能する。
これは、業務提携やアライアンスによって自社にない強みを補うという、現代の経営戦略にも通じる発想だと言えるでしょう。

3-5 得意分野を掛け合わせることでチームは強くなる
信が持つ突破力や統率力、河了貂が持つ戦術眼、蒙恬や王賁が率いる個性の異なる部隊、そして楊端和が率いる山の民という外部パートナー。
こうした凸凹のあるメンバーやチームが、それぞれの持ち場で役割を全うし、必要な時には手を取り合う。
このような組織設計こそが、飛信隊、ひいては秦国全体を強くしてきた力の源泉だと言えます。
リーダー一人がすべてを担おうとするのではなく、社内の異なる部門や、時には社外のパートナーの力まで含めて、適材適所でチームを組み立てていく視点は、限られたリソースで戦う中小企業にとって特に参考になるはずです。
4. 秘訣3:大きなビジョンと「見る景色」を示すメンター
4-1 嬴政が掲げた「争いのない国」というビジョン
若き秦王・嬴政が中華統一を志す理由は、単なる領土的な野心ではありません。
当時の中華は500年にわたって戦乱が続いており、嬴政はこの争いを根本から終わらせるために、国境そのものをなくし、力によって最初の統一を成し遂げようとしたと言われています。
一時的な安定ではなく、長期的な平和を築くための統一。これは、目先の勝利だけを目的とした野望とは一線を画すビジョンです。
興味深いのは、この壮大な構想が、当初は秦国内の重臣や他国の武将たちからも「狂気の考え」として否定されていたと伝えられている点です。
会社を興す経営者が掲げるビジョンも、多くの場合、最初は周囲から理解されにくいものです。
「本当にそんなことが実現できるのか」と懐疑的な目で見られながらも、掲げ続けた理想に少しずつ仲間が集まり、やがて大きな力になっていく。
嬴政のビジョンが辿った道のりは、まさに経営者が理念を掲げて組織をつくっていく過程と重なります。
目先の利益ではなく「何のためにこの事業をやるのか」という問いに立ち返るとき、嬴政の「争いのない国をつくる」という原点は、多くの経営者にとって示唆に富むものではないでしょうか。

4-2 信の憧れであり、目標そのものだった王騎
一方、信が目指す「天下の大将軍」という夢を、具体的な姿として体現していたのが、六大将軍の一人である王騎です。
物語序盤、信の目標は「かっこいい将軍になりたい」という漠然としたイメージにすぎませんでした。しかし政と信に出会ったことで再び戦場に戻った王騎という存在そのものが、信にとって目指すべき将軍像を具体的に示すことになったのです。
嬴政が組織全体の大きな理念を掲げる存在だとすれば、王騎は現場の一人ひとりにとって、その理念を体現する身近なロールモデルだったと言えるでしょう。
4-3 「将軍の見る景色」というビジョンの継承
王騎は、大将軍という立場から見える景色には、敵の姿だけでなく、味方の姿や戦場全体の広がりまでもが含まれるということを、信に語って聞かせたとされています。
目の前の戦いに勝つことだけでなく、より高い視座から全体を見渡す視点を持つことこそが、将たる者に求められる資質だという示唆です。
この教えは、単なる精神論ではなく、信がその後、千人将、三千人将と昇格していく中で、実際に体感していくことになります。

4-4 リーダーの死後も受け継がれるビジョンの力
王騎は、馬陽の戦いで趙国の武将・龐煖との一騎打ちの末に命を落とします。この訃報を受けた政は、出陣前に王騎と交わした最後のやり取りを思い返し、深く心を動かされたと描かれています。
しかし王騎の存在は、彼の死をもって終わったわけではありません。彼が示した大局観やビジョンは、信をはじめとする多くの登場人物に受け継がれ、その後の物語を動かす力になっていきます。
冒頭で触れた映画『キングダム 魂の決戦』が描く、王騎の死から3年後の函谷関防衛戦もまた、その思いを受け継いだ信たちが、嬴政の掲げる「争いのない国」というビジョンの実現に向けて戦う物語です。優れたリーダーが残すべきものは、目先の指示ではなく、組織が長期的に向かうべき方向性そのものである。
このエピソードは、経営者の事業承継やビジョンの継承を考えるうえでも重なる部分が多いのではないでしょうか。

5. 秘訣4:見える昇進ステップと現場からの人材登用
5-1 伍長・什長・百人将……飛信隊に見る成長のステップ
飛信隊のメンバーは、伍長、什長、百人将、千人将、五百将といった明確な階級を一段ずつ上がっていく形で成長していきます。
飛信隊の結成時にはただの一兵卒だったメンバーが、戦功を積み重ねる中で少しずつ昇進し、隊の中核を担うまでに成長していく姿が随所に描かれています。
目標に至るまでの道のりが階段状に可視化されていることは、メンバー自身が自分の成長を実感しやすくする仕組みとしても機能していると言えるでしょう。
5-2 戦災孤児だった信が大将軍を目指すという成長物語
信自身も、身分も後ろ盾もない戦災孤児として物語の冒頭に登場します。
そんな信が、幾多の戦いを経て天下の大将軍を目指すまでに成長していく過程こそが、『キングダム』という物語の核にあります。
出自や肩書きにとらわれず、実力と経験によって人材が評価され、成長していく様子は、実力主義的な人材育成のあり方を象徴していると言えるでしょう。
5-3 目標達成率を上げる「任せて信じる」マネジメント
信が周囲から信頼され、より大きな部隊を任される場面が増えていくにつれて、彼自身も責任感を持って成長していきます。
マネジメントする側が、メンバーの成長段階に応じて権限や役割を委ね、信じて任せる姿勢を持つことは、目標達成率を高める組織づくりにおいて欠かせない要素です。
細かく管理しすぎるのではなく、明確な成長ステップを示しながら任せることで成長の機会を与える。このバランス感覚こそが、強いチームをつくる鍵になります。

まとめ
『キングダム』が多くの経営者やビジネスパーソンに支持されているのは、単なる娯楽としての面白さだけでなく、信の「引っ張らないリーダーシップ」、河了貂・蒙恬・王賁・楊端和に見る「個性豊かなメンバーとチームがそれぞれの役割を全うする組織設計」、
嬴政と王騎が示した「大きなビジョンとその継承」、そして飛信隊に見る「見える昇進ステップと現場からの人材登用」といった、現代の組織マネジメントにも通じる普遍的なテーマが、具体的な登場人物のエピソードとともに描かれているからです。
完璧なリーダーを目指すのではなく、チームの凸凹を活かし合い、大きなビジョンのもとに人を巻き込みながら育てていく。
そんな組織づくりの視点を、自分たちのチームにも取り入れてみてはいかがでしょうか。


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【参照サイト】
- 映画『キングダム 魂の決戦』公式サイト
- キングダム経営学(日経ビジネス電子版)
- 『キングダム』主人公が実践!最強の「引っ張らない」リーダーシップ(日経ビジネス電子版)
- 【ビジネスの極意】『キングダム』河了貂(かりょうてん)に学ぶ、組織を成長させるマネジメント(サライ.jp)
- 『キングダム』王騎(おうき)将軍の人物像とモデル、死亡の瞬間や名言について詳しく解説(アニメイトタイムズ)
- 『キングダム』の名言ランキング! 王騎らの心に残る名セリフを紹介(マイナビニュース)
- 河了貂 - Character|TVアニメ「キングダム」公式サイト
- キングダムの登場人物一覧(Wikipedia)
- キングダム 嬴政(えいせい)とは? 始皇帝の夢と挑戦を探求!(アニメイトタイムズ)
- えいせい - 嬴政(ピクシブ百科事典)
- キングダム蒙恬(もうてん)史実と比較し検証!(漫画ネタバレ考察【アース】)
- 『キングダム』王賁(おうほん)とは?史実と合わせて解説(アニメイトタイムズ)
- 『キングダム』楊端和(ようたんわ)の実在のモデルは男?(ciatr[シアター])
- 『キングダム』楊端和(ようたんわ)とは?史実も含めて解説(アニメイトタイムズ)



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