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休んでも疲れが取れないのはなぜ?経営者が実践したい3つのリカバリー戦略

執筆者の写真: 山崎 広治
山崎 広治
17 時間前
読了時間: 11分

はじめに

「寝ても疲れが残る」 「休日に休んだはずなのに、月曜日から身体が重い」 「以前より集中が続かず、判断にも時間がかかる」


忙しい経営者やビジネスパーソンほど、このような状態を「年齢のせい」「今が忙しいから仕方がない」と処理しがちです。


しかし、疲労の問題は、単に身体がつらいことだけではありません。


判断が遅くなる。 視野が狭くなる。 些細なことに苛立つ。 重要度より緊急度に引っ張られる。


こうした変化は、仕事の質や人間関係、経営判断にも影響します。


そこで重要になるのが「リカバリー」です。


リカバリーとは、疲れを感じてから長く休むことではありません。仕事で使った身体、脳、感情の状態を、次の仕事で能力を発揮できる状態へ戻すプロセスです。


本稿では、多くの方法を並べるのではなく、研究上の根拠が比較的明確で、忙しい人でも実行しやすい3つに絞ります。


【本稿で分かること】


  • 休んでも疲れが取れない理由

  • 疲労が判断力と仕事の質に及ぼす問題

  • 研究から考える3つのリカバリー戦略

  • 朝・仕事中・終業時に実践できる具体策

リカバリー戦略-01



1.なぜ「休むだけ」では回復できないのか?

1-1.疲労の原因と休み方が合っていない

疲れたとき、多くの人は「何もしないこと」を休息だと考えます。


もちろん、身体を使いすぎたときには活動を止めることが必要です。しかし、デスクワークや経営判断による疲労は、身体を動かしすぎた疲れだけではありません。


大量の情報を処理する。 複数の仕事を切り替える。 人の感情に配慮する。 正解のない問題を判断する。


経営者やビジネスパーソンは、注意、思考、感情のコントロールに多くの力を使っています。


このような状態でソファに座っていても、スマートフォンでニュースやSNSを見続け、仕事の連絡を確認していれば、脳に入る情報は止まりません。


身体は休んでいても、認知的には休めていないのです。


反対に、一日中座って生じた身体の重さに対しては、さらに横になるより、短い散歩や軽い運動のほうが適している場合があります。


つまり、回復で最初に考えるべきなのは「何時間休んだか」ではありません。


「自分は何によって疲れているのか?」 「その疲労に、今の休み方は合っているのか?」


という二つの問いです。

リカバリー戦略-02


1-2.本人が感じる疲労と能力低下は一致しない

疲労には、「疲れた」と感じる主観的な側面と、注意力や作業能力が低下する側面があります。この二つは、いつも一致するとは限りません。


強い緊張や締め切りがあると、疲れていても動けてしまいます。本人は「まだ大丈夫」と思っていても、確認漏れが増えたり、視野が狭くなったり、反応が感情的になったりすることがあります。


特に注意したいのは、次のような変化です。


  • 同じ文章を何度も読み直す

  • 簡単な判断を先延ばしにする

  • 普段より短気になる

  • 人の意見を受け止める余裕がなくなる

  • 極端に楽観的、または悲観的になる


これは疲労だけでなく、睡眠不足やストレスなど複数の要因で起こり得ます。重要なのは、「動けているから問題ない」と考えないことです。


経営者の判断は、採用、投資、評価、撤退、組織文化へ連鎖します。


だからこそリカバリーは、個人の快適さのためだけではなく、意思決定の品質を守るためのリスク管理でもあります。

リカバリー戦略-03


1-3.回復が必要な人ほど仕事から離れにくい

仕事のストレスが強いほど、本来は多くの回復が必要になります。


ところが、責任や心配事が増えるほど、休日にも仕事を考え、連絡を確認し、心理的に仕事から離れにくくなります。


この矛盾は、労働心理学の領域で「リカバリー・パラドックス」と呼ばれています。


売上、人材、資金、顧客対応などの問題を抱える経営者にとって、「問題が解決したら休む」という考え方は現実的ではありません。問題がすべてなくなる日は、なかなか来ないからです。


必要なのは、疲れ切った後にまとめて休むことではありません。


高い負荷の途中にも小さな回復を入れ、負荷を翌日まで持ち越しにくくする設計です。

リカバリー戦略-04



2.研究から考える3つのリカバリー戦略

2-1.戦略1|睡眠を「時間」だけで評価しない

睡眠は、リカバリーの土台です。


厚生労働省の「健康づくりのための睡眠ガイド2023」では、成人は個人差を踏まえながら、6時間以上を目安として必要な睡眠時間を確保することが推奨されています。


また、オックスフォード大学の研究者による2023年のレビューでは、睡眠時間だけでなく、睡眠効率や睡眠の分断と実行機能との関係が整理されています。


ここでいう実行機能とは、情報を一時的に保持する、衝動を抑える、注意を切り替える、計画を立てるといった、仕事や意思決定に欠かせない脳の働きです。


したがって、確認すべきなのは「何時間ベッドにいたか」だけではありません。


  • 起床時に休まった感覚があるか

  • 日中に強い眠気がないか

  • 夜中に何度も目が覚めていないか

  • 就寝時刻と起床時刻が大きく乱れていないか


経営者の中には、ウェアラブル端末で睡眠スコアを確認している人も多いでしょう。ただし、一晩のスコアだけで回復状態を決めるのは適切ではありません。


数字とともに、起床時の回復感、午前中の集中力、感情の安定を見ます。


実践することは一つです。


毎朝、「睡眠による回復感」を0点から10点で記録してください。


睡眠時間、ウェアラブルのデータ、本人の感覚を数週間並べると、自分にとって何が回復を妨げているかが見えやすくなります。

リカバリー戦略-05


2-2.戦略2|疲れ切る前に短い回復を入れる

忙しい人ほど、休憩を「仕事が終わった後に取るもの」と考えます。


しかし、集中力が大きく落ちてから休むより、負荷の途中に短い休憩を入れるほうが、疲労の蓄積を抑えやすくなります。


ルーマニアの西ティミショアラ大学を中心とする研究チームは、2022年に22の独立した研究サンプル、合計2,335人を対象としたメタ分析を発表しました。


その結果、10分以内のマイクロブレイクには、活力を高め、疲労を軽減する小さいながら有意な効果が示されました。


一方で、仕事のパフォーマンス全体に対する効果は明確ではありませんでした。特に認知負荷の高い仕事では、数分の休憩だけですべてが回復するわけではないことも示唆されています。


ここから学べるのは、「5分休めば必ず生産性が上がる」ということではありません。


短い休憩は、疲労をゼロにする方法ではなく、疲労の積み上がりを小さくする方法だということです。


経営者やビジネスパーソンには、重要な会議や判断の間に5分から10分の移行時間を入れることをおすすめします。


その時間にメールを処理してしまえば、脳は休まりません。


  • 立ち上がる

  • 少し歩く

  • 遠くを見る

  • 呼吸をゆっくり整える

  • 水分を取る


この中から一つを選びます。


また、ランダム化比較試験を統合した2022年の系統的レビューとメタ分析では、中程度の運動習慣が、疲労感、活力、エネルギーに小から中程度の改善をもたらすことが報告されています。


疲れた日に激しいトレーニングを追加する必要はありません。デスクワーク中心の人であれば、昼食後に10分歩くことからで十分です。

リカバリー戦略-06


2-3.戦略3|一日の仕事を心理的に終了する

今回、最も重視したいのが、仕事からの「心理的切り離し」です。


心理的切り離しとは、会社を出ることではありません。仕事に関する思考や感情から、一時的に距離を置くことです。


テンプル大学の研究者が2023年に発表した系統的レビューでは、159件の実証研究を検討し、仕事から心理的に離れることを、健康、ウェルビーイング、仕事のパフォーマンスを支える重要な回復体験として整理しています。


さらに、ドレスデン工科大学などの研究チームが2021年に発表したメタ分析では、心理的切り離しを改善する30研究、34の介入、合計3,725人が検討されました。


介入には平均的に有意な効果があり、短期間・低頻度のものより、期間が長く実施量の多いもののほうが効果的でした。


つまり、仕事から離れる力は、性格だけで決まるものではありません。習慣として練習できます。


おすすめは、終業時に5分間の「シャットダウン・ルーティン」を行うことです。


  1. 今日終わったことを書く

  2. 未完了の仕事と次に行う行動を書く

  3. 明日の最重要課題を一つ決める


未完了の問題をすべて解決する必要はありません。


「次に、いつ、何をするか」を頭の外へ出すことで、忘れないように考え続ける必要を減らします。


その後は、緊急連絡を除いて仕事の通知を止めます。


ソファで休みながらチャットを確認するより、「今日の仕事はここまで」と区切る行動のほうが、心理的な終了をつくりやすくなります。

リカバリー戦略-07



3.明日から実践するリカバリー設計

3-1.朝|回復状態を1分で確認する

朝に確認するのは、次の3項目だけです。


  • 睡眠による回復感

  • 頭の冴え

  • 気分の安定


それぞれを0点から10点で記録します。


3項目すべてが普段より明らかに低い日は、重要な判断を避ける、別の人の確認を入れる、仕事量を調整するなど、意思決定の方法を変えます。


この記録は医学的な診断ではありません。目的は、絶対的な点数を競うことではなく、自分の通常状態からの変化を知ることです。

リカバリー戦略-08


3-2.仕事中|重要な仕事の間に10分空ける

会議、交渉、人事評価、トラブル対応など、認知的・感情的な負荷が高い仕事を連続させないようにします。


すべての予定を変える必要はありません。


まず、最も重要な予定の前後だけ、5分から10分の余白を確保します。


その時間は、新しい情報を入れる時間ではありません。


立つ、歩く、遠くを見る、呼吸を整える。


次の仕事へ移る前に、前の仕事で高まった緊張を一度下げます。

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3-3.終業時|5分で仕事を頭の外へ出す

一日の最後に、終わったこと、未完了のこと、明日の最重要課題を書きます。


そして、緊急時を除いて通知を止めます。


経営者の場合、自分だけが実践しても、社員から連絡が入り続ければ切り離しは難しくなります。逆に、経営者が深夜や休日に即時返信を続ければ、それが組織の暗黙のルールになります。


そのため、チームでは最低限、次の二つを決めます。


  • 何を緊急連絡とするか

  • 夜間・休日の連絡にいつ返信すればよいか


リカバリーを個人の意志の強さに任せず、連絡の仕組みとして整えることが重要です。

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まとめ|回復は「残った時間」にするものではない

休んでも疲れが取れないとき、さらに多くの健康法を試す前に、次の3点を見直してみてください。


  1. 睡眠を時間だけでなく、起床時の回復感や日中の状態まで含めて確認する

  2. 疲れ切る前に、仕事の合間へ5分から10分の回復を入れる

  3. 終業時に未完了の仕事を頭の外へ出し、仕事を心理的に終了する


重要なのは、完璧な生活をつくることではありません。


朝に状態を知る。 仕事の途中で負荷を下げる。 夜に仕事を終わらせる。


この3つを毎日繰り返すことです。


アスリートにとって、リカバリーはトレーニング後の余った時間に行うものではありません。次の試合や練習で力を発揮するため、あらかじめ計画するものです。


経営者やビジネスパーソンも同じです。


リカバリーとは、疲れた後の後処理ではありません。


次の重要な判断で、本来の力を発揮するための準備なのです。




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参考文献&サイト

1.厚生労働省「健康づくりのための睡眠ガイド2023」 https://www.mhlw.go.jp/content/001305530.pdf


2.Sen A, Tai XY. Sleep Duration and Executive Function in Adults. Current Neurology and Neuroscience Reports. 2023;23(11):801-813. Oxford University. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37957525/


3.Albulescu P, Macsinga I, Rusu A, Sulea C, Bodnaru A, Tulbure BT. Give Me a Break! A Systematic Review and Meta-Analysis on the Efficacy of Micro-Breaks for Increasing Well-Being and Performance. PLOS ONE. 2022;17(8):e0272460. West University of Timișoara. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36044424/


4.Puetz TW, O'Connor PJ, Dishman RK. The Effect of Chronic Exercise on Energy and Fatigue States: A Systematic Review and Meta-Analysis of Randomized Trials. Frontiers in Psychology. 2022. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/35726269/


5.Agolli A, Holtz BC. Facilitating Detachment From Work: A Systematic Review, Evidence-Based Recommendations, and Guide for Future Research. Journal of Occupational Health Psychology. 2023;28(3):129-159. Temple University. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/37141024/


6.Karabinski T, Haun VC, Nübold A, Wendsche J, Wegge J. Interventions for Improving Psychological Detachment From Work: A Meta-Analysis. Journal of Occupational Health Psychology. 2021;26(3):224-242. Technical University of Dresden and collaborating institutions. https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34096763/


7.Sonnentag S. The Recovery Paradox: Portraying the Complex Interplay Between Job Stressors, Lack of Recovery, and Poor Well-Being. Research in Organizational Behavior. 2018;38:169-185. https://doi.org/10.1016/j.riob.2018.11.002




注意事項

本記事は、研究知見と公的資料に基づく一般的な情報提供を目的としており、医学的な診断や治療に代わるものではありません。


十分に休んでも強い疲労が続く場合や、発熱、体重変化、息切れ、動悸、強い眠気、不眠、気分の落ち込みなどを伴う場合は、自己判断で疲労として処理せず、医療機関や産業保健の専門家へご相談ください。

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