【イベントレポート】「アバナード Beyond AI フォーラム 2025」:エージェントAI、認知コスト0、そして企業の未来への鍵
- 山崎 広治
- 6月6日
- 読了時間: 18分
2025年6月5日、虎ノ門ヒルズフォーラムにて「アバナード Beyond AI フォーラム 2025」が開催されました。Microsoft ソリューション プロバイダーとして業界をリードするアバナードが主催したこの無料イベントは、AI時代の変革をどう加速させるか、何が必要か、そのヒントとインサイトを得られる貴重な機会となりました。
今や、企業が市場での競争力を高めるには、AIのビジネス活用は不可避とされています。
生成AIの急速な普及に続き、Microsoft CopilotやAIエージェントなどが実装段階に入り、その価値が証明されつつあります。アバナードは、AIを単なる「利用」にとどめず、チーム全体の創造性、協働、生産性を高めるものとして捉え、新たな相互作用と自律的な活用への道を開くことを目指しています。
イベントでは、基調講演とブレイクアウト セッションを通じて、アバナードのエキスパートやゲストとの交流、最新テクノロジーの先進的なインサイトの獲得が可能でした。本レポートでは、このフォーラムで語られたAI時代の重要なキーワードや企業の取るべき戦略についてご紹介します。


AI時代の変革を牽引するエージェント型AIの台頭
基調講演では、生成AIがいよいよ爆発的なフェーズに入ったことが強調されました。
Chat GPTの月間利用者は既に4億人に達し(2025年1月時点の統計)、もはや一部の先端ユーザーだけでなく、多くの人々が利用しています。企業側の動きも加速しており、アバナードが今年実施した国内調査では、今後12ヶ月以内にAIを本番運用へ移行する予定の企業が88%に上ります。
しかし、実際に本番運用に成功した企業は22%に留まっているのが現状です。多くの企業がPOC(概念実証)はできたものの、その先の本格展開に進めず、ここに大きなチャンスと課題が存在しています。
生成AIの次に注目されているのが「エージェント型AI」です。
エージェント型AIとは、人間が設定した目標を達成するためにAI自らが計画を立て、実行する自律システムです。従来のチャットボットやRPAのように決められた手順に従うだけでなく、状況に応じて自律行動できる点が大きな特徴です。AIが仮想の労働力となり、人の負荷を大幅に削減する可能性があり、私たち一人ひとりが有能なアシスタントや代理人を持つような形になると考えられています。
この変革のインパクトは非常に大きいと予想されています。
Gartnerによると、2028年までに日常業務の意思決定の少なくとも15%がエージェント型AIによって自律的に行われるようになると予測。
MicrosoftのBuildイベントでは、2028年に13億体のエージェント型AIが稼働しているとの予測も紹介されました。AIは単に情報提供や提案を行う存在から、主体的に仕事をこなす存在へと進化しており、私たちはまさに人とコンピューターの関係性が再定義される転換点に立っています。
エージェント型AIの登場により、これまで人間が培ってきた複雑な判断やマルチステップの業務が自動化され、ビジネスのスピードとスケールが飛躍的に向上すると考えられます。例えば、顧客からの問い合わせに対し、複数の社内システムにアクセスして必要な手続きを自律的に完了させ、結果を返すまでを一貫して24時間365日行えるような仮想アシスタントの実現も可能です。
これにより、単なる業務効率化を超え、サービス品質の向上や新しいビジネスモデルの創出までを実現する可能性があるのです。エージェント型AIは、組織のあり方、仕事のやり方、顧客との向き合い方、これら全てに変革をもたらすポテンシャルを持っています。

「認知コスト0」時代と新たなKPI「認知のリターン」
このエージェント型AIの台頭と共に、「認知コスト0」という概念が訪れています。
認知コストとは、ビジネスにおいて情報収集、理解、判断するために必要な時間や労力、つまり「頭の負荷のコスト」を指します。
これまで、人間が何か意思決定をしたり、資料を作成したりするには、多大な時間と経験と知識が必要であり、このコストは常に無視できない重いものでした。熟練者ほど高い給料を支払い、組織としても人材育成に投資しても、意思決定には時間がかかるのが当たり前だったのです。
しかし、ここ1年ほどで状況が一変しつつあります。高度な生成AIやエージェントAIの登場により、知的作業にかかるコストが限りなくゼロに近づいています。報告書の要約やデータ分析、広告のバナー作成といった認知労働が、数秒から数分、ほぼゼロコストで済んでしまうのです。
これは知的労働の限界費用が限りなくゼロに近づくことを意味し、ビジネスに革命的な効率化をもたらします。その結果、人間は創造的な発想や対人コミュニケーションなど、より高付加価値な業務に多くの時間を割くことができるようになっています。
興味深いことに、アバナードの調査では、日本の平均的な従業員は米国の同等従業員と比べて2.3倍もの時間を情報検索に費やしているという結果が出ています。社内外の情報探しに労力をかけるこのコストこそが、日本の労働生産性が諸外国よりも低い要因の一つだという指摘もあります。
もしAIが最適に導入され、必要な情報や分析結果を瞬時に提示してくれれば、こうした無駄な認知コストを大幅に圧縮し、従業員は空いた時間と頭脳を使ってより高付加価値の高い仕事に集中できるようになります。
認知コスト0とは、企業にとって「知の高速道路」が開通したようなものだと定義されています。これまで情報収集や意思決定にブレーキをかけていた抵抗がなくなり、一気にトップギアで走れる状態になったと言えるでしょう。重要なのは、各企業がこの恩恵を受け取る準備ができているかです。せっかく認知コストがゼロに近づいても、それを活かす仕組みや文化がなければ「宝の持ち腐れ」となってしまいます。
この劇的な環境変化に対応するため、アバナードは新たなKPIとして「認知のリターン(Return on Cognition)」を提案しています。これは、投入した認知リソースに対してどれだけの価値が創出できたかを測る指標です。従来のROIのような財務的指標だけでは、人間の知的労力やAIが生み出した付加価値を十分に捉えきれません。認知のリターンという概念で、認知資本からの価値創出を可視化することを目指します。
例えば、従業員がAIエージェントを使うことで削減できた単純作業時間、その結果生まれた時間で生まれた新しいアイデアやプロジェクト、AI提供の分析や示唆による意思決定スピード・精度の向上、それが売上や顧客満足度にどう寄与したかなどを定量化します。
ポイントは、人間とAIを合わせた認知能力全体から最大のリターンを引き出すことです。AIによって解放された認知こそが、直接経営指標向上に繋がる原動力になる、という考え方です。認知のリターンは、AIが単に便利なツールにとどまらず、企業業績に直結する価値を生み出していることを示すKPIとなります。
先進的な企業では、生成AIの活用によって1人で10人分の業務をこなすことが現実味を帯びてきています。AIによって従業員の能力が拡張された分を正しく評価し、経営判断につなげる必要があります。
認知のリターンを高めることこそが、これからの競争優位の鍵となると考えられます。単にAI投資額に対するROIを見るのではなく、AIによって生み出された知的な成果や時間の有効活用を見ていく視点が重要であり、これは人材育成や働き方とも深く関係します。

日本企業の課題と、AI・組織変革による処方箋
目を日本企業に向けると、デジタル・トランスフォーメーション(DX)が思い通りに進まず悩んでいるケースが非常に多いのが実情です。特に中小企業で顕著であり、DXに全く着手できていない企業も少なくありません。
日本企業のDX推進は世界的に見ても遅れをとっていると、経済産業省のレポートでも指摘されています。多くの海外企業が技術活用度を高めている一方、日本企業全体のDX成熟度は低い水準にとどまっています。
なぜこれほどDXが進まないのか。その理由としてよく挙げられるのが、人材育成と人材不足、そして組織文化の問題です。デジタル人材が圧倒的に足りず、安定を最優先し変化を恐れる日本企業特有の文化が根強いことが指摘されています。
教育や採用が追いつかず、必要なスキルを持つ人が社内にいない結果、新しいITシステムの導入にも慎重になる傾向があります。さらに、一部の現場では失敗を避けたい空気から、小さくトライアルして満足し、本格展開に踏み出せないケースも見られます。
もう一つ極めて深刻なのが人手不足です。日本の生産年齢人口は減少の一途をたどり、多くの業界で慢性的な人手不足が課題となっています。
特に中小企業では大手企業に比べて人材獲得競争で不利な立場にあり、現場が恒常的に人手不足になりがちです。IT人材だけでなく、現場のオペレーションチームの人手不足を訴える声も頻繁に聞かれます。DX推進どころか、日常業務を回すだけで手一杯な企業も少なくありません。
こうしたDXの遅れと人手不足に対する処方箋は何でしょうか。それは、皆様のご想像の通り、AIの積極活用、そして組織・働き方の見直しという2軸が鍵となります。
AI活用については、エージェント型AIこそが鍵となります。足りない人をAIで補うという発想です。単純なRPAによる自動化は限界が見えつつありますが、エージェント型AIであればより高度な業務までを任せることが可能になるため、人手不足で苦しむ現場にとって救世主となり得ます。
例えば、社内ヘルプデスクにAIエージェントを導入すれば、社員からの質問に即時対応したり、必要な社内手続きを代理で進めたりすることが可能になり、間接部門の負荷が飛躍的に下がります。AIエージェントを戦力として組み込むことで、人材不足だからと諦めていた新規ITシステムの導入も実現できるようになるかもしれません。
AI活用は人材不足の対処療法であると同時に、DX遅延への根本策でもあります。なぜなら、DXを進めるための人材そのものをAIがある程度代替できる可能性があるからです。
システム開発やデータ分析を自動で行うAIツールが登場しつつありますが、エージェント型AIプラットフォームを導入すれば、専門のIT人材が不足していても、現場主導である程度の業務アプリケーションを作っていく、そんな未来も遠くないと考えられます。これは、どの企業でも手軽にDXの第一歩を踏み出せる環境を整える取り組みとなるでしょう。
組織・働き方の見直しについては、「フラクタル組織」が一つ答えとなります。これは変化に適用できる機動力の高い組織に作り替えていく、という考え方です。これまでの日本の一般的な階層型組織では、新しい技術を採用するにも稟議に時間がかかったり、失敗を嫌う文化が影響してスピード感に欠けたりするケースが見られました。
これを改め、各現場がある程度自律判断し、小さく試し、良ければすぐに全体に展開する。そうした迅速性と俊敏さを身につけることが重要です。組織文化を大胆に変革し、現場主導のイノベーションを促すことが求められます。人が足りないからできない、ではなく、人は足りなくてもAIと工夫で補う、そうした発想の転換が必要です。
フラクタル組織とは、数学のフラクタル構造のように、全体と部分が自己相似の関係にある組織です。組織においては、どのレベルの組織も全体と同じ機能や判断力を持ち、自律的に動ける組織を指します。小さなチームであっても会社全体と同じ機能と意思決定権を備え、現場判断で迅速に動けるように設計されています。
一方で、各チームの行動は全体戦略と自然に整合しているため、組織全体の方向性がぶれることはありません。環境変化に強く、官僚的な硬直性や脆弱性を克服できると言われています。AIのような新技術を取り入れる際にも、トップダウンの一斉展開だけでなく、各チームが自分たちの業務に適したAI活用方法を自律的に模索し、それを全体に波及させる、そういった動きが理想的です。
現場の主体性と創意工夫を最大限に引き出す、こうした組織デザインが欠かせません。日本の伝統的な組織文化の中でいきなりフラクタル型に移行するのは容易ではありませんが、考え方のエッセンスを取り入れることは可能です。
例えば、小さなクロスファンクショナルチームを作り権限を委譲したり、現場が提案したAI活用のアイデアを迅速に試行できるサンドボックス環境を用意したりすることです。大 事なのは、現場の一人ひとりが会社全体を背負っている、という当事者意識を持てるようにすることです。
そうすれば、社員は受け身ではなく、自ら考え行動を始めます。AIという強力な武器を持った現在、人-AIチームが自律的に走り続ける組織こそが、新たな競争力を生み出すと考えられます。

AI活用の基盤となる「責任あるAI」
AIの恩恵を最大限に享受するためには、そのリスクと倫理に十分配慮しなければなりません。ここでいう「責任あるAI(Responsible AI)」とは、AIを使うことによる社会的・倫理的な影響に責任を持ち、適切に管理していくことを指します。
AIは非常に強力なツールですが、その出す結論や提案が常に正しく公平であるとは限りません。偏ったデータで学習すれば偏見を助長する結果を出す可能性があり、説明できない判断をすることもあります。また、個人情報、セキュリティ、ハルシネーション(AIが誤った情報を事実として生成すること)といった問題にも注意が必要です。
アバナードは、こうした課題に対して包括的なResponsible AIフレームワークを作成し、プロジェクトに適用しています。具体的には、AIが個人、社会、環境に及ぼしうる影響を3つの観点でチェックリスト化し、検討します。
例えば、AIシステムが意思決定に介入することで個人の尊厳やプライバシーが侵害されないか、雇用や公正な機会にどのような影響があるか、環境負荷は許容範囲か、といった項目です。さらに、企業価値観との整合性や必要な統制措置が講じられているかまで細かく検討します。
技術面でも、AIの判断理由を追跡・説明できるようにしたり、偏見を検出するアルゴリズムを組み込んだりするなど、透明性や公平性の確保に努めています。結果だけでなく根拠を示すAIチャットボットの構築や、生成テキストが企業倫理に反していないかをチェックするレイヤーの実装など、「バイデザイン(設計段階からの組み込み)」の責任あるAIを適用しています。
プロジェクトの初期段階からお客様と一緒にリスク評価を行い、必要であれば利用範囲のポリシー策定なども支援しています。アバナードは、MicrosoftのResponsible AI原則(公平性、信頼性・安全性、セキュリティ、包括性、透明性、説明責任)に基づき、独自の具体的な対策を講じています。
アバナードは、人々、社会、環境への配慮を確保したAI活用を実現するパートナーでありたいと考えています。お客様がAIを安心して活用できるよう、技術的ガイダンスだけでなく、倫理的ガバナンスの面でもエンドツーエンドでサポートしています。これは単にリスクを避けるためだけでなく、長期的に見れば信頼できるAIを使うことがビジネスの持続的な成長につながるからです。
昨今、AIに関する規制の議論も進んでおり、消費者や従業員もAIの使われ方に敏感になっています。だからこそ、企業は率先して責任あるAIの姿勢を示す必要があるのです。アバナード社内でもResponsible AI委員会を設置し、AIガバナンスを支援するプラットフォーム(Avanade.AI)の開発にも取り組んでいます。技術の力に人の目を組み合わせ、安全で信頼できるAI活用を実現するのがアバナードの使命です。
責任あるAI活用なくして、AIの真の価値創出はありません。AI導入・活用時には、初期段階からガバナンスと倫理を組み込むことの重要性が強調されました。

AvanadeのAIソリューションと国内外での活用事例
アバナードは、企業がエージェント型AIを簡単に構想、作成、導入、管理できる統合プラットフォーム「Avanade.AI」を提供しています。これは複雑になりがちなAIの実装をシンプルにし、実験段階からエンタープライズまで一貫して行えることを目指したものです。
Avanade.AIは、リアルタイムでのエージェント操作が可能なPlayground、透明性と制御を提供するSupervisor Agent、エージェント開発ツール、承認されたモデルやツールへのアクセスを提供するRegistry、そして監督エージェントの監視・制御を行うManagement Agentなどの機能を持ち、迅速なテスト・学習、エージェントの簡単な編集、バイアスや公平性、セキュリティリスクなどの管理を可能にします。
グローバルでのAvanade.AI活用事例として、米国の信用組合の例が紹介されました。1000以上の支店を持つこの信用組合は、数ヶ月の導入期間で15以上のソリューションを実稼働させました。
その結果、ローン変換率が10%から60%に向上し、平均待ち時間が3~4時間から15分に短縮されるという劇的な成果を上げています。これは人的視点からも大きな影響をもたらしており、浮いた人材リソースをより付加価値の高い業務に再配置することが可能になりました。具体的には、銀行取引明細書のチェック、矛盾検出、データ抽出、異常フラグ付けを自律的に行うエージェントなどが活用されています。
日本企業でのAI活用事例も2社紹介されました。
第一三共株式会社
製薬業界トップの同社は、大量の機密情報を扱うためAI活用に情報漏洩リスクの懸念を持っていました。そこで、自社向け生成AIシステム「DSai」の開発を決断し、国内グループ従業員9300名に提供するプロジェクトを推進。アバナードが開発パートナーとして支援し、1ヶ月という短期間でPOCから実導入までを達成しました。アバナードの強固なセキュリティ基盤上で社内データを活用することで、機密情報漏洩の心配なく安全な環境でAI活用を実現。この事例は、高度に規制された業界でも適切なパートナーと組めば、経営のリーダーシップ、現場のエッセンス、テクノロジーを揃えることで、スピードと規模を両立したDXが可能であることを示しています。
日本航空株式会社 (JAL)
DX戦略を経営方針に掲げ、AI・データ活用に積極的なJALですが、2023年に検討を開始した社内情報検索・回答システムの精度課題に直面し、プロジェクトを見直しました。そこでアバナードがパートナーとなり、2024年1月にプロジェクトを再始動。目指したのは社内業務効率化のための生成AI活用で、具体的には社内規定・マニュアルへの即時回答、複数システム横断検索、会議メモ自動作成、整備マニュアルの提供の4点です。その結果、間接部門のほぼ100%がJAL AIを活用し、空港業務専用の「空港 JAL AI」もリリース。現場からは回答速度向上や資料作成負担軽減などの好評を得ています。
Avanade社内でのCopilot活用推進事例
アバナードは、自社でも積極的にAI活用を進めています。特にMicrosoft 365 Copilotの活用は重要な取り組みであり、グローバル経営会議のKPIにCopilotアダプションレート(導入率)が設定されるほどです。
全社員約1万人がCopilotを利用できるようになっており、目標導入率は95%です。現在のアダプションレートは約80%ですが、1年前の展開初期に比べ飛躍的に向上しています。これは、アバナードのトップ自身がCopilotを体験しその価値を感じ、全社展開を推進したことが大きな要因です。
ただし、利用には申請と必須トレーニングが必要で、3週間以内に完了しないとアカウントが凍結される仕組みになっています。これが利用率100%にならない一因であり、仕事が忙しくトレーニングを受ける時間がないといった社員もいるのが正直なところです。
Copilotの活用推進のため、アバナードではグローバル全体に推進委員会を設置し、各国に「Copilotチャンピオン」を配置しています。チャンピオンは国内での展開、ライセンス利用状況や活用状況の確認、フィードバック収集・報告を行い、週次で確認・改善サイクルを回すことで、迅速な展開を可能にしています。
活用推進施策としては、日々の業務にCopilotを意識させる「デイリーチームズ」でのショートTip提供、社内SNSでのユーザーグループによる情報交換(月間1800件投稿され、初心者の心理的ハードルを下げている)、移動中などに聞けるPodcastなどを実施しています。トレーニングも必須のTier 1に加え、より高度な活用方法を学ぶTier 2をウェビナー形式で提供。エグゼクティブ向けに、扱う情報レベルに合わせたプロンプトの書き方などの専門トレーニングも実施しています。
アバナード社内でのCopilot利用状況分析では、Copilot Chatの利用が最も多いことが示されています。また、開発者の間ではGitHub Copilotの利用率が特に高く、コード補完による生産性向上を実感しているという声が多く聞かれます。アンケート結果では、80%の社員が知的疲労の軽減を感じていると回答しており、情報収集・整理・分析にかかる時間の削減効果が大きいことが裏付けられています。
日本マイクロソフトのWork Trend Indexからも示唆されたように、AI活用には人材不足解消への期待がある一方で、リーダーと現場では忙しさの認識にギャップがある場合があります。日本はCopilot活用が北米に次いで2番目に進んでいる国ですが、これは、アバナードがMicrosoft 365環境(SharePointでのデータ管理、Outlook/Teamsでの情報蓄積、厳格なアクセス権限管理)を長年整備してきたことが大きく貢献しています。
これにより、CopilotのResearcherやAnalystといった機能が社内情報を効率的に収集・分析することを可能にしています。このような基盤はゼロから構築するのは容易ではありませんが、AI時代には必須となるでしょう。

まとめと今後の展望
アバナード Beyond AI フォーラム 2025を通じて、AI投資・期待がますます高まっており、競争力維持・向上のためAI活用が不可避であることが再確認されました。特にエージェント型AIは、業務効率化や生産性向上だけでなく、組織や働き方そのものを変革するポテンシャルを秘めています。
この変化に対応するためには、明確な「AI戦略」の策定が不可欠です。ビジネスゴール、ビジョン、価値とリスク、ロードマップを整理し、特にビジネスゴール設定においては、責任あるAI、サステナビリティ、信頼性の観点が重要となります。また、ビジョンは3~5年先を見通す絶妙なタイミングで設定し、最終ユーザーを意識し、継続的に改善できる成長するプラットフォームを構築することが求められます。
AI活用推進の鍵は、適切な基盤(人材、データ、セキュリティ)の整備と、現場での成功体験を積み重ね、成果を可視化し、組織全体で共有・展開していくことです。アバナードは、長年培ってきたMicrosoft 365環境の強固な基盤と、Copilotや社内AIエージェント開発で得た実践的な知見を活かし、企業のAI変革を支援していきます。
AIエージェントはこれからのコンピューティングの主要なインターフェースになると言われています。日本企業がこの変化の波に乗り遅れることなく、むしろ独自の強みを活かして飛躍できるよう、アバナードはMicrosoftテクノロジーの戦略的パートナーとして、お客様と共に事例を積み上げ、ビジネス変革を全力で支援していく、というのが本フォーラムから強く伝わってきたメッセージでした。
本レポートが、皆様のAI活用推進のヒントとなれば幸いです。
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