【徹底解説】2025年春の健康経営・ウェルビーイング最前線 - 進化する企業の取り組みと最新トレンドとは? -
- 山崎 広治
- 5月19日
- 読了時間: 11分
企業を取り巻く環境が大きく変化する現代において、「健康経営」と「ウェルビーイング経営」は、従業員のエンゲージメント向上、生産性向上、そして企業価値向上に不可欠な要素として、その重要性を増しています。 2025年春、この分野では制度のアップデート、新たな顕彰制度の創設、国際的なガイドラインの発行など、注目すべき動きが多数見られました。 本記事では、これらの最新動向を深掘りし、企業の担当者の皆様が今後の戦略立案に役立てられるよう、詳細に解説します。

1. 「健康経営優良法人2025」認定企業発表の詳細:評価のポイントと先進企業の取り組み
経済産業省と日本健康会議が共同で実施する「健康経営優良法人認定制度」は、従業員の健康管理を経営的な視点から戦略的に実践する企業を顕彰するものです。2025年度の認定では、大規模法人部門で「ホワイト500」、中小規模法人部門で「ブライト500」に加え、新たに「ネクストブライト1000」が創設され、より裾野の広い企業が健康経営に取り組むことを後押ししています。
① 評価のポイント:量から質へ、そして成果へ
これまでの認定制度と比較して、2025年度の評価では、健康施策の「実施量」だけでなく、その「質」と「成果」がより厳格に評価されるようになっています。
具体的には、以下の点が重視されるポイントになります。
経営層のコミットメント
経営トップが健康経営の重要性を認識し、積極的に関与しているかどうかが問われます。単なるメッセージの発信だけでなく、具体的な目標設定や資源配分を通じて、健康経営を推進する姿勢が求められます。
従業員のエンゲージメント
従業員が健康施策に主体的に参加し、その効果を実感しているかどうかが重要視されます。従業員のニーズを踏まえた施策の設計や、参加を促すためのコミュニケーション戦略が鍵となります。
健康データの活用
従業員の健康診断データやストレスチェックの結果などを分析し、課題を特定した上で、効果的な施策に繋げているかが評価されます。PHR(パーソナル・ヘルス・レコード)の活用も推奨されています。
生産性への影響
健康経営の取り組みが、従業員の欠勤率低下、生産性向上、創造性の向上といった具体的な成果に繋がっているかが問われます。ROI(投資対効果)の視点も重要になります。
② 先進企業の取り組み事例(推測):
認定を受けた先進企業では、以下のような取り組みがより深化していると考えられます。
個別化された健康支援
全従業員に向けた画一的な施策だけでなく、個々の従業員の健康状態やリスクに応じた、きめ細やかな支援プログラムを提供。
メンタルヘルス対策の強化
ストレスチェックの実施だけでなく、カウンセリング体制の充実、職場環境の改善、管理職向けのメンタルヘルス研修の実施など、多角的なメンタルヘルス対策を展開。
コラボレーションの推進
医療機関、保険者、自治体、健康関連企業などと連携し、専門的な知識やリソースを活用した、より質の高い健康支援を提供。
テクノロジーの積極的な活用
健康管理アプリ、ウェアラブルデバイス、AIなどを活用し、従業員の健康状態の可視化、行動変容の促進、データに基づいた施策の効果測定などを実施。
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2. 「健康経営銘柄2025」選定企業の分析:投資家が注目するポイント
「健康経営銘柄」は、東京証券取引所の上場企業の中から、特に優れた健康経営を実践している企業を経済産業省が選定するものです。2025年は53社が選定され、その顔ぶれは多様な業種にわたります。投資家は、これらの銘柄を通じて、従業員の健康を重視する企業の持続的な成長性とリスク管理能力を評価しています。
投資家が注目するポイント:ESG投資の観点から
近年、ESG(環境・社会・ガバナンス)投資の重要性が高まる中で、健康経営は「S(社会)」の重要な要素として認識されています。投資家は、健康経営銘柄に選定された企業の以下の点に着目しています。
経営戦略への組み込み
健康経営が企業の経営戦略の中核に位置づけられ、明確な目標とKPI(重要業績評価指標)が設定されているか。
具体的な取り組み内容
従業員の健康増進、疾病予防、メンタルヘルス対策、働き方改革など、具体的な施策がどのように実施され、どのような成果を上げているか。
情報開示の透明性
健康経営に関する情報が、IR(投資家向け広報)活動などを通じて、適切かつ透明性高く開示されているか。
リスク管理
従業員の健康リスクが適切に管理され、事業継続計画(BCP)などにも反映されているか。
長期的な視点
短期的なコスト削減だけでなく、長期的な視点に立ち、従業員の健康投資が企業価値向上に繋がるという認識を持っているか。
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3. ウェルビーイングEXPO 2025の詳細:最新サービスとソリューション
「ウェルビーイングEXPO」は、企業が従業員のウェルビーイングを向上させるための最新の製品、サービス、ソリューションが集まる展示会です。2025年春の開催では、以下のような分野の展示が注目を集めました。
健康管理・増進
健康診断、運動支援プログラム、食事サポート、禁煙支援、睡眠改善など。
メンタルヘルスケア
ストレスチェック、カウンセリング、EAP(従業員支援プログラム)、マインドフルネス研修など。
コミュニケーション活性化
社内SNS、チームビルディング、エンゲージメントサーベイなど。
働き方改革
フレックスタイム制度、リモートワーク支援、オフィス環境改善など。
福利厚生
カフェテリアプラン、育児・介護支援、 ウェルビーイング支援など。
テクノロジー
健康管理アプリ、ウェアラブルデバイス、AIを活用したヘルスケアソリューションなど。
これらの展示を通じて、企業は自社の課題やニーズに合ったソリューションを見つけ、従業員のウェルビーイング向上に向けた具体的な施策を検討することができます。

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4. 政策動向の深掘り:人的資本経営におけるウェルビーイングの位置づけ
経済産業省が提唱する「人的資本経営」は、従業員を単なるコストではなく、企業の成長の源泉となる「資本」として捉え、その価値を最大限に引き出す経営戦略です。この人的資本経営において、従業員のウェルビーイング向上は極めて重要な要素と位置づけられています。
「人材版伊藤レポート2.0」では、従業員の健康、働きがい、成長などが、企業の持続的な成長に不可欠な要素であると強調されています。ウェルビーイングの向上は、従業員のエンゲージメントを高め、創造性や生産性を向上させる好循環を生み出すと考えられています。企業は、ウェルビーイングを戦略的に推進することで、従業員の離職を防ぎ、優秀な人材を惹きつけ、結果として企業価値の向上に繋げることができます。

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5. 「食育実践優良法人顕彰(仮)」の詳細:健康経営における食の重要性
「食育実践優良法人顕彰(仮称)」は、従業員の健康増進において、食生活の改善を積極的に支援する企業を顕彰する新たな制度として、農林水産省が中心となって創設を進めています。健康経営の観点からも、従業員の食生活はパフォーマンスや健康状態に大きな影響を与えるため、その重要性が認識されています。
顕彰のポイント(検討段階):
食に関する取り組みの具体性
健康的な食事の提供、食に関する情報提供、食育セミナーの実施など、具体的な取り組み内容とその実施状況。
従業員の参加促進
従業員が主体的に食生活改善に取り組むための工夫やインセンティブの設計。
健康効果の測定
食に関する取り組みが、従業員の健康状態や食習慣にどのような変化をもたらしたかの測定と評価。
経営層の理解と支援
経営層が食育の重要性を理解し、必要な資源を提供しているか。
この顕彰制度の創設は、企業が従業員の健康を包括的にサポートする上で、食の側面をより重視するようになる契機となることが期待されます。

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6. ISO 25554:2024の意義:グローバルな視点でのウェルビーイング推進
2024年11月に発行されたISO 25554:2024「高齢化社会-地域や企業等でウェルビーイングを推進するためのガイドライン」は、高齢化が進む社会において、あらゆる組織が人々のウェルビーイングを向上させるための国際的な指針を示すものです。
この規格は、健康経営の考え方や日本の先進的な取り組みも参考にされており、グローバルな視点からウェルビーイングを推進するための枠組みを提供します。
ISO 25554のポイント:
包括的なウェルビーイングの定義
身体的、精神的、社会的な側面を含む、広範なウェルビーイングの概念を提示。
多様なステークホルダーへの適用
地域社会、企業、教育機関、医療機関など、様々な組織が活用できる汎用性。
段階的な推進プロセス
ウェルビーイング推進の目標設定、計画策定、実施、評価、改善といった段階的なプロセスを提示。
国際的なベストプラクティスの共有
各国の成功事例や知見を共有し、効果的な取り組みを促進。
デジタル技術の活用
ウェルビーイング推進におけるテクノロジーの役割を強調。
ISO 25554の発行は、日本企業がグローバルな視点を取り入れ、より体系的にウェルビーイングを推進するための重要な一歩となるでしょう。

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まとめ 〜 進化し続ける健康経営・ウェルビーイングへの取り組みと、未来を見据えた企業戦略としての本質 〜
2025年春、健康経営とウェルビーイング経営は、制度の深化、テクノロジーの進化、国際的な枠組みの登場など、あらゆる観点から進化を遂げています。「健康はコストではなく、戦略資産である」という考え方が、いよいよ経営の中核に根づき始めたことを、今年の数々の動きが示しています。
中小企業への支援が拡充され、「ブライト500」「ネクストブライト1000」のように取り組みの裾野が広がり、健康経営銘柄ではESGの視点から投資家の関心もますます高まっています。さらに、食育の取り組みや人的資本開示、そして国際標準ISO 25554:2024の登場は、ウェルビーイングの取り組みが企業の競争力やグローバルな信頼性に直結する時代が訪れたことを象徴しています。
これからの企業にとって重要なのは、これらの変化を単なる「トレンド」として受け取るのではなく、自社の未来戦略の一部として本気で統合していく姿勢です。
施策の数や実施率といった“表面的な実績”ではなく、従業員の変化や成果に本質的に向き合う取り組みこそが求められています。そして、その中心にあるのは、従業員一人ひとりの人生と向き合う経営の在り方です。
さらに忘れてはならないのが、経営者やリーダー自身の「整った状態」、つまりいかにベストコンディションであるかも重要です。トップが自らの健康と向き合い、パフォーマンスを高める姿勢を持つことが、企業文化の土台となり、従業員のモチベーションや信頼にも大きく影響を与えます。
健康経営やウェルビーイング経営は、もはや“あればいい”施策ではなく、企業の持続可能性を支える根幹です。未来の企業価値は、財務指標だけでは測れません。人的資本、エンゲージメント、幸福度といった「人の質」こそが、次代の競争力を形づくります。
この変革の波に乗るか、乗り遅れるか。まさに今が分岐点です。
本記事が、貴社の次なるアクションへの一歩となれば幸いです。
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